商店街

  自転車でうろうろクリーニング屋を探してたら
 演歌の音色に誘われた。ふらふらと近づくと、商店街の入り口だった。
 団地の東隣にもあったけどこっちにもあったんだ。
 大阪は商店街大健闘地域なのかもしれない。
 ぜんぜん聞いたことのない演歌が延々と流れる商店街。なんかわたし馴染んでるよなぁ…。
 物色する。蕎麦屋、仏花しかない花屋、豆腐屋、惣菜屋、 布団屋、和菓子屋、果物屋、文房具屋…。なんでもある。いろんな匂いがする。
 ああ、この匂い、震災前の西宮北口の商店街と同じやわ。 ええ所やな。ホンマ住めば都や。(5月)

 

ネット社会

 

  ネットといってもインターネットではない。
 自転車の籠に付ける防犯ネットのことだ。
 今日自転車に買い物袋をのせてたら、手押し車のおばあちゃんに
「ひったくりにあうで」と注意された。おばあちゃんの方がよっぽど危ないのに。
 大阪はアジアだ。やっぱりちょっとキンチョー感がある。

 

あめちゃん

  大阪のコミュニケーション手段に「あめちゃん」が使われることは有名だ。
 伯母の見舞いで京都からの帰り、疲れが出たのかバスの席に着くなり、自分でもびっくりするほど大きなため息をついた。
 向こうに座っているおばあさんと目があった。おばあさんは「うんうん」と私を見て頷いている。わかるわかる、しんどいねんな、とでも言いたげに。
 ちょっと恥ずかしくなっていると、おばあさんが近づいてきて
「おあがり!」と落花生あめを握らせてくれた。
「おおきに」とお礼を言って口に放り込んだ。
 おばあさんのポッケに入ってたからか、あめちゃんはぬくかった。

 

産経新聞

  夕飯の支度をしていると新聞の勧誘が来た。
 ここらは公明党のポスターと産経新聞の販売店ばかり目に付く地域なのだ。
 インターホン越しに断ってから聞き覚えのある声や、と思い出した。ちょっと前、郵便受けで見かけた配達のおじさんのことを。なんか独特の雰囲気のある人だった。毎日新聞なら取ってあげようと思ったので
「おじさんなに新聞の人?」と聞いたら
「産経や。どう?とってみいひん?ええ新聞やで」 と売り込む。目つきがぎらぎらして印象的だ。 その勢いに引いてしまい
「産経かぁ。うーん、今はええわ」 とその時は断った。そのおじさんをちょっと立ててあげたくなったのと、あとはやっぱり今あえて産経を読んでみようと思い直し、追いかけていって呼び止めた。契約書を渡され住所名前を書く。最後におじさんは
「好きな男性のタイプも書いてな」と大阪人らしくひとこと多い。(5月)