大阪オカン サマーコレクション

  大阪オカンにとって、手袋、日傘、サンバイザーは夏のマストアイテムだ。
 とりわけ最近のサンバイザーは顔面を覆い隠すのが主流。
 防犯ネットと傘スタンドを搭載したチャリにまたがる オカンは正義の味方のようだ。

 

大阪ウォーター

  商店街の水道工事店に大阪水道局のポスターが貼ってあった。
「めっちゃええやん大阪の水。なんとかウォーターに負けてへんね!」 という標語(!?)が載っていた。
  「なんとかウォーター」というところにイケズが効いていて大阪らしい。
 大阪の公営企業ポスターは直球ど真ん中をこれでもかと投げてくる。
 10年くらい前にあった大阪市営地下鉄の「チカン アカン」は名作だ。会社に研修に来ていた外国人が一番最初に覚えたニホンゴが この「チカン アカン」だった。 「ドウイウ意味デスカ?」と問われ 「ドント セクシャルハラスメント」と英訳したら、ニヤニヤ笑っていた。
 消防局の「放火は犯罪です」も一見手抜きのようだが味わい深い。大阪人にはこれくらい言わないとわからへんって感じ。 ちょっとさびれた下町の裏通りでこのポスターを見ると、効果が際だつ。
 ちょっと狙いすぎてるきらいもあるのだが、ベタなギャグを100回続けて芸にするところが大阪人らしい。

 

あいさつ好き

  大阪人はあいさつが好きだ。 バス停で「暑いですね」なんて言うと、
「ホンマ、暑っついねぇ〜。ゆうべもクーラーつけっぱなしやったわ」と、 聞いてへんことまで返ってくる。声をかけたからと言って、(えっ?なにこの人?)みたいに相手が引くことはない。そのかわり、声をかけられたらシカトは許されない。
 会話は時候の挨拶だけでは終わらない。一呼吸おいてから、 「おねえちゃん、どこまで?」 とラリーが続くのだ。これもかなりの確率。
「歯医者はどこがええ?」とか聞くと、待ってましたと言わんばかり
「あそこのセンセイは阪大でてはって・・・」なんて喜んで教えてくれる。 情報の正確さはあてにならないが。
 小学校の前で見守り隊やってるオッチャンも通行人みんなに声をかけている。
「ネエチャン、それなんの楽器や?ええなぁ。こんど弾いて見せてぇな」とか。 あいさつひとつにしても食い下がってくるようなしつこさは、 「心のつながりが希薄になった現代」という慣用句を無意味にさせる。
 みんな大阪人を演じる芝居をしているようだ。

 

阪神ファンの不安

  世の中おかしい。
 自民党の圧勝。大型ハリケーンなどの異常気象。 杉田かおるがセレブになったり、村上ファンドが阪神株買ったり。
 そう、阪神と言えば、タイガースがまた優勝してしまったのだ。 スポーツ新聞のどこを見ても、きょうび「ダメ虎」という言葉は見当たらない。
 どうしたんや!!もちろん、うれしくないわけではない。 でもなんか居心地が悪い。
 「ダメなアンタを支えるダメなワタシ」を演じてきたタイガースファンは これからどうストーリーを描き演じていけばいいのか。先の見えない不安、という言葉がぴったりくる。自民政権に替わって、社民・共産が与党になったら こんなカンジなんやろか。
  うれしいけど、なんやそれはそれで不安。 外野でギャーギャー喚いてこそハナってか?
 夜、天満に飲みに行った。いつもより人通りが少ない。
 あ、わかった!みんな甲子園行ったか、家でテレビ見てるんやわ! 商店街のチケットショップでは阪神戦はすべてSOLD OUT。 商店街のアーケードにはタイガースの横断幕。 「天満猛虎会」のハッピを着たおっちゃんたちが、酒樽を用意している。
 100円ショップの店先にも虎グッズが並ぶ。洗脳ビデオのように「六甲おろし」が流れつづける。
 家の近くまで帰ってくると、玄関を開け放した民家からテレビの灯り と、野球中継の音がもれてくる。府営住宅からは「ウォーッ!!」という歓声が秋の夜に響いた。チャンチャカチャンチャカ。おはしで茶碗を叩くような音も。 みんなで集まって酒盛りしてるんやな。
 虫の声を聞きながら帰宅。 秋晴れ。ふと隣の長屋を見ると、物干し台にタイガースの旗飾ってるやないか! タイガースの旗を掲げている民家は初めて見た。
 時折見かける、この家のおっちゃん。今日は真っ赤な帽子を かぶってる。こころなしか背筋がいつもよりしゃんとしているような。
 ここいらに住んでいると、ホンモノがいるので、軽い気持ちで 「阪神ファンです」なんて言えない雰囲気なのだ。