「戦艦三笠」を見に横須賀へ行った。
横須賀駅の改札を出るなり、軍艦がお出迎え。
駅前には「開国の街 横須賀」と掲げてあるけど、 とっさに思い浮かぶのはやはり「軍港」だと思った。客船と違い、灰色に塗り込められた軍艦を見るのは
なんとも気が沈む。
プリンスホテルが建ち、ドブ板や市街地は 舗装されて整然とした町並みになっている。
ほどなく三笠公園到着。中心には東郷さん銅像。入場料500円(自衛隊員は300円)。油引きのにおいの残る甲板を歩く。
船内の展示物が新しい。聞けば、日露戦争100周年事業 にあわせて今年1月にリニューアルしたとのこと。それまで自分たちで大東亜戦争まで展示していたが、今回から広告代理店に依頼し、日露戦争の展示に絞ったという。軍服などを飾ってある展示室のナフタリンのにおいが、小学生の時に行った自衛隊の資料館を思い出させる。
ふと見上げると、天井にむき出しの鉄骨を覆うデコボコ。ひょっとしてア○ベ○ト!?
とっとと出て行きたくなり、最後に入館者ノートを見る。
「東郷さんダンディ」 「三笠最高!!」「日本人でよかった」 「100年も前にこんなものをつくった帝国日本はすごい」など若い文字でつづられている。ちなみに100年も前にこんなもの(三笠)をつくったのは帝国日本ではなく、大帝国イギリス。日本は買っただけです!
いっぽうわずかながら、「憲法9条死守!」「やばい!」 というのもある。
資料を求めに売店に立ち寄る。「東郷ビール」は知ってたけど、 グッズの充実ぶりに唖然とする。盃やネクタイピン、日章旗はもちろん、海軍カレー、海軍コーヒー、海軍サブレ、海軍せんべい、焼酎に純米酒「此の一戦」。売店の商品だけで十分お腹いっぱいになる品揃えだ。わたしは、冊子と日章旗にラッピングされた「総員おこし」(米おこし)を買う。
小学生の時、家の近所に自衛隊があった。 落下傘の訓練や、夜間訓練は日常的な光景だった。夏になるとお祭りがあったし、子供会のキャンプで中にはいることができた。とりわけ、古い木造の戦争記念館で隊員たちが扮するお化け屋敷は、そんじょそこらのテーマパークは問題にならないほど怖いことで人気だった。
今から思えば、「英霊」の資料を保存する場所で、おばけ屋敷ってのはなかなかシュールな企画だ。今でもあるのだろうか。
そんな多感な時期に自衛隊の洗礼を受けた私は、愛国・軍事モノにけっこうなびいてしまうフシがある。年末も紅白歌合戦を見るより、テレビ東京の「日本海海戦」の4時間ドラマを好んだ。乃木将軍に芦田伸介、その息子に中井貴一、その恋人に有森成美などと、キャスティングまで自分で考えてしまうけったいな小学生だった。だから、そーゆーものを好む人の気持ちや高揚感はわからなくはない。
でも、なんだろう。管理教育と放任教育の両方を経験してみると、 戦争を通じた高揚感みたいのを求めるのは、なんか、ズボンのチャックをわざとあけて歩く人みたいで、
やっぱりちゃんとしまっておかなアカンよな、と思うようになった。