柏原崇ではなく、伊東四朗みたいなオジサンだった。
オジサンはあいさつをしてペロリと私の答案用紙をめくった。
「す、すみません、歴史上の人物、多すぎて思い浮かびません」
「あ、いいですよ」とあっさり。私の煩悶はなんやってん!
一通りの質問をしてオジサンは言った。
「大企業と違ってウチは私一人ですから・・・」
ええっ!!アンタだけぇ?? イケメン辣腕若手弁護士はおらんのぉ?! 私の妄想計画が・・・。
「法律関係に興味はありますか」
「あ、はい。憲法について関心があります」
オジサンの満足げな表情にホッとする。 それからオジサンは慎重に付け加えた。
「この仕事はとにかく正確さが要求されます。 それに自信のない人にとっては、ただ苦痛な仕事になるだけです。 自信はありますか」
面接で「自信があるか」と聞かれ、「ない」とも答えられず 「人並みには」と答えた。
その後、OL時代に何度やっても計算の答えが合わなかったことを思い出し ジワッと汗が出てきた。や、やべえ。 オジサンは私がドン引きしてるのに気づかないみたいで、
時給など細かい話をしてくる。もしかして私のこと気に入ってる? もうええよぉ〜、カンベンしてよぉ〜。 でも、「人並みに」と言った以上、後には引けない。
採用される前からユウウツになってきた。
どうか採用されませんように。【完】