……すると、向こうの担当者はとてもバツが悪そうに、 でも断固たる調子で、
「たいへん申し訳ありませんが」と切り出してきた。
えっ?えっ? すっかり「受付嬢」になるつもりだったので、向こうが何を言わんとしているのか とっさにわからない。
担当者は(そんなこったろうと思った)と言わんばかり、電話の向こうの声が笑っている。
「いや、あのですね、受付の方はちょっと今回はアレなんですが、どうでしょう、事務の方でアルバイトなど。受付と違って、まぁ、お客様に直接接する、ということはないのですが・・・」
ちょっと待ってヨ。それじゃまるでわたしを人前に出すのがなんか問題あるワケ? だんだんと声がトーンダウン。
担当者は私のとまどいを察知したのだろうか、電話の向こうで笑いをこらえてる気がしてならない。
「アンタなら大丈夫」といった父の言葉は、単に親バカ というより、なんの根拠もないデタラメということが 証明された。
受付嬢はだめだったけど、事務の方で、ということで、 改めて面接。
同じ会場へ向かう。もう緊張感などない。
「どうぞこちらへ」と案内された事務所のソファで待たされた。
見回すと、活気がある明るいカンジのする職場だった。おネエチャンはキレイだし、けっこういいカンジ。事務でもいいかも、と思っていたら 「お待たせしました、どうぞこちらへ」
とソファから移動させられ、そこの事務所を後にする。
「すいません、ちょっとここから少し歩きます」
え?今の事務所とちゃうの?
ビルの非常階段を降りて、細い廊下を歩き、倉庫を横切って、裏口の明かりが見えたころ、 「こちらです」と息切れされながらつれていかれたのが、新しい職場だった。
おばさんが3人、にっこり笑って迎えてくれた。