国保減免申請1

  用事があって役所へ行ったら、 いつになくごったがえしていた。
 国民健康保険が値上がりし、その説明と 減免の申請にきているお年寄りたちだった。
 40人待ちのカードを受け取って、仕方なく、ソファで自分の順番を待った。
 すると下町風の2人のおばあちゃんの値上がりを嘆く声が聞こえてきた。
 そこへ少し身なりの良い老婦人がやってきて2人の会話に加わった。
「わたしらなんて2倍やで!」と 2人下町のおばあちゃんは顔を見合わせる。
「ワタシのトコなんか3倍よ」と上品おばあちゃん。
 下町おばあちゃんたちは少しムッとした表情で、
「それは、奥さんとこ収入が多いからや。 私ら国民年金でもともとがびびたるもんや」
「そうはいっても3倍はいくらなんでもおかしいから 税理士に聞いてみたのよ」 (つづく)

 

国保減免申請2

  上品おばあちゃんが立ち去った後、2人の下町ばあちゃんが
「『税理士』やって。そうとう儲けるハズやで。でなきゃ、フツウ税理士なんかに相談しいひんで。金持ちひけらかしてイヤミやな。こんなとこ来る人ちゃうやん」
 どっちも年金暮らしであることには変わらないのに、分け前が少なくなると、足の引っ張り合いだ。 (つづく)

 

国保減免申請3

  下町おばあちゃん達はヒマをもてあまし、ぐるりと役所を見渡し、新たなターゲットを見つけた。
「あそこの人ヒマそうやな」
 ごった返す「介護保険課」に比べ、「市民サービス課」は平常業務。
 こっちは生きるか死ぬかって時に、公務員はヒマなくせにたくさん給料をもらって……。そんな鋭い視線が窓口に注がれる。
 公務員の厚遇モンダイ、社保庁の不正(?)などなど、一連の公務員バッシングが、実はこの日のために用意されたかのよう。
「どうやって生活していったらいいんですか」
 と窓口で泣き崩れるおばあさん。席を立ち上がって怒るおじいさん。
「おかしいと思うのですが、そういう制度になってしまい……」
 職員はただ平謝り。
 職員に文句を言っても仕方ない。
 そんな政策をすすめる政権を選んだのは私たちなんやで。(完)

 

老人よ杖を取れ!

  職場での会話。50代の女性は実父が九州の特養にいる。
 気遣いはしつつも、兄夫婦に任せているので、制度の変更までは知らない。
「特養の食費が自己負担になって月6万円増だって」
 と私が言うと、初めて知ったようで、
「ひっどー!だってお年寄りって年金収入だけやん。
 それに一日2000円の食費って高い。ふつうまず食費から節約するやん。
 それにしても大事なことがスルスル決まっていくね」
 と怒りあらわ、というか信じられない様子。
「与党多数やからや。でも、そういうと、共産党とかサヨクって言われる。そんなんと違うのに」と私。
 横で聞いていた人も加わる。
「ただフツウにしてくれるだけでいいのにね」
 一番若い女性がついに
「なんでコイズミなんかに入れるねん!」と怒り出す。
 一瞬みんな引いたかと思うと、
「誰がいい思いしてんの?」と誰かのフォローが入る。
「銀行は最高益だよね」と私。
「うん、そうやわ」
 みんな頷く。
「競争力の高いところを優遇して、そのもうけを還元してもらう考えだからね。  でもおこぼれなんていつまでたってもまわってくるわけないやんか」
 心配顔の若い女性が、
「なんで老人立ち上がらへんのやろ」
 反コイズミ(?)の女性が答える。
「立ち上がれヘンやん、実際。ホンマ、足腰立たんモンから狙ってくるなぁ。ハンストなんかやったら死んでまうしなぁ」
 我が職場、ゆるいけど、オモロイ・・・。